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自筆証書遺言

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは,法定の方式に従い遺言を記載した書面のうち,遺言者が全文・日付・氏名を自書し,押印したものをいいます(民法968条)。

自書

自筆証書遺言は,遺言者の真意を確かめ,偽造・変造を防ぐため,本人が全文を自筆で書くことが必要です。パソコンやワープロで作成することはできないため,自分で文字を書く能力(自筆能力)が必要です。視力が衰えたり,手が震えたりして文字を書くことができない場合,手を添えてもらうことによって自書と認められないことがあります(最判昭和62年10月8日民集41巻7号1471頁)。

また,ご夫婦の仲が良くても,2人以上の人が共同で同一の遺言書に遺言をすることもできません(共同遺言の禁止 民法975条)。

日付

遺言は,いつでも遺言の方式に従って撤回でき,前の遺言が後の遺言と抵触するときは,後の遺言が優先します。このことから,遺言書には作成の日がわかるように日付を記入することが必要で,「○年○月吉日」という記載は認められません(最判昭和54年5月31日民集33巻4号445頁)。

押印

自筆証書遺言には押印が必要です。押印は,遺言者の真意を確かめ,偽造・変造を防ぐためですから,印鑑の種類は自由ですし,押印する箇所に決まりはありません。

自筆証書遺言のご相談

自筆証書遺言は,ご自身で簡単に作成でき,内容を他者に知られることもありません。しかし自筆証書遺言は,紛失したり,変造・偽造がされるおそれがありますし,記載内容が不明確だとトラブルの原因になります。

遺言はご自身の最終の意思を確認するためのものですから,ご自身の意思を明らかにするとともに,ご家族にトラブルを生じさせないためにも,弁護士にご相談されることをおすすめします。

【動画でわかる!】自筆証書遺言について

こんにちは。弁護士の奥田竜子です。今日は自筆証書遺言についてお話をしたいと思います。

 

自筆証書遺言というのは、相続人自らですべてを自分の手で書かれた遺言書のことをいいます。法律上、厳しくきちんと書かなければならないことというのは決められています。すべての文章、それから日付、お名前、それから押印が必要になってきます。

 

 自筆証書遺言というのは、誰の力も借りずにご自身で書くことができますから、いつでもどこでも、夜中にふと目が覚めたときに自分のお部屋で書くこともできるので、そういう意味では利便性は高いのかなとは思うんですけれども、実際にその遺言書でもって遺言の内容、万が一のときご自身が亡くなられたときに実現してもらうというためには、この遺言書が有効なものではなくてはなりません。それから有効だというのは何かをちゃんと書き漏らしがないかということなんですけれども、それからそれを実現できるだけの特定がないと駄目だとも言われています。

 

 特定というのはここに書いてるんですけれども、例えば不動産を姪っ子の誰々にあげるという場合には、その不動産がきちんとした形で地番とかそれから所在とか、それが特定できるようなものがなければなりませんし、それからその姪御さんのお名前、住所、生年月日もあったほうが特定としてはしやすいのかなというふうに思います。

 

 なかなかご自身で書かれるために、そういう意味では内容に漏れが多いこともあって、おおよそこういうことを希望してこの遺言書を書いたんだろうな、ということが後から分かって、それが相続人の皆さんの間でも全く争いがなく、そのとおりにしてあげたいってみんなが思っても、なかなかそうはできないような場合もありますので注意が必要です。自筆証書遺言を作る場合にもやはり専門家である弁護士に、内容に漏れがないのか、きちんと実現できるのか、その辺りを確認されることをお勧めいたします。

 

 それから自筆証書遺言は、先ほど申し上げたように全文を自分で書かないといけないので、別紙目録について誰それにあげるというのがしっかり自分の手で書かれていたとしても、その目録、預貯金目録であったり、不動産目録であったり、そういうものがワープロで書かれて添付されているような場合には、全体としてその目録がないと遺言の内容が分からないということで、無効だと判断されたことがありますので注意が必要です。すべてを自筆で書く。それからきちんと特定をして実現ができるようにするという意味では、実はかなりハードルが高い遺言の方式かも分かりません。ですので、その辺り注意が必要かなと思います。

【動画でわかる!】自筆証書遺言について~ご家族の立場から

こんにちは。弁護士の奥田竜子です。今日は自筆証書遺言について、今度は発見した相続人ご家族の立場からお話をしてみたいと思います。

 

 自筆証書遺言というのは、被相続人自らが記載をした、作成をした遺言書のことをいいます。「こういう遺言を書いたから俺に何か万が一のことがあったら、このとおりによろしく頼む」と言って、きちんと家族に預けている場合もありますけれども、愛読書の中にひっそり挟んでいるというような事例もあるのかなと思います。遺品を整理してるときにパラリとそういう遺言書らしきものが出てきた場合、ご家族の方は何をすればいいのかということについてお話をしたいなと思います。

 

 そうやって遺言書を発見した場合、開けたくなるのが心情でしょうけれども、しっかり封をされていた場合には開けてしまうと、そのことによって中が変造、偽造されるんじゃないのかといった疑惑が生じてしまうところでもありますので、基本的にはそのままの状態で紛失等がないようにしっかり保存をして、それから検認手続きという手続きを取ってください。

 

検認手続は家庭裁判所で行う手続きなんですけれども、家庭裁判所に遺言書を発見したので検認手続きをしたいという申し立てをします。その際には遺言書を作成した被相続人の相続人が誰なのか、ということもある程度明らかにして申し立てをする必要があります。申し立てをしましたら、家庭裁判所のほうから検認手続の日についての通知が来ると思います。家庭裁判所は発見をして申し立てをした相続人だけではなくて、その他の相続人に対しても、この日に遺言書の検認をしますので、来れるようであれば来てくださいというような開催の通知を出すことになると思います。

 

大事なのは、この検認手続きなんですが、これは遺言書の有効だ、無効だということをその場で判断するものではないということです。裁判官それから書記官さん、それからその日に集った相続人の方みんなが見守る中で、「はい、こういう形の遺言書がありました。皆さん確認してください。表にはこう書かれていて、裏にはこう書かれています。封がされていますね。今から開けます」と言って皆の前で開封をして、内容についてこう書かれていますということを確認します。「これは誰の字か。どう思いますか」ということを事実上尋ねられることもあるかと思いますけれども。それで有効、無効だということが決まるものではありません。

 

その場で見せられても、それが被相続人、亡くなったおじいちゃんの字かどうかその場で判断したことが、後々もずっとっていうことになるとちょっと難しいかなと思う。分からないときは分からないということでいいのかなと思います。

 

それがきちんとした形でこういうふうに保存されていて、こういうふうになっていました。中身はこういう記載でしたよっていうことで、調書を作りますので、後日それを謄写申請などして遺言書の内容を、各自がうかがい知ることができるというふうになっています。

 

何度も申し上げているように、これは有効か無効かということではありませんので、この遺言書に従ってきちんと遺産分割、あるいは遺言のとおりに遺産を分けることができる、取得することができるかというのはまた次のステップの問題かなと思います。

 

自筆証書遺言というのは、自分でどこでもすぐに書けるという意味では利便性が高いのですが、一方でやっぱり書き漏れであったりとかが多いのかなというのが、今までの経験上、私が思っているところです。ですので、相続人間に争いがないのにも関わらず、遺言書のとおりにしてあげられないというような、歯がゆい状況が生じることだってあるわけです。ですので、そういう意味ではやっぱり自筆証書遺言を作成するときにはきちんと専門家の意見を聞いて、遺漏がないかどうかを確認をして作成されることをお勧めします。

 

ちなみに余談なんですけれども、私自身の経験なんですが、みんな相続人間に争いがなくて、それから亡くなられたおばあちゃまのお気持ちもよく分かる、どうしたいかも何となく分かる。だけれどもやっぱり特定がなされていないので、そのとおりには不動産の登記簿を変えられないというようなという場面に遭遇したことがあります。被相続人と、それからその不動産を取得する予定であった、そう指定されていた人との間で、死因贈与契約があるんだということで、訴訟で法的に解決をしたということがあります。参考になさってはいかがでしょうか。

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