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負担付死因贈与と負担付遺贈

私が亡くなったら、住んでいる家を、同居している長男に譲ろうかと思っています。しかし、妻が生きている間は長男に生活の面倒をみてもらわなければなりません。こうした希望を実現するには、どうすればよいのでしょうか?

「自分の死後は家を贈与するので、妻が生存中は同居して扶養してほしい」という希望を実現する方法として、相手方との合意により行う「負担付死因贈与」遺言により行う「負担付遺贈」があります。

以下でお示しするように、これらの方法は、それぞれに特徴があるので、ご希望に応じて最適な方法も変わってきます。

こうした方法を決める場合には、不動産の登記を確実に行うことや、相続人に保障された相続割合である「遺留分」を侵害することができないことも考慮しておく必要があります。 

1 負担付死因贈与

(1)負担付死因贈与とは

贈与をする人(贈与者)の死亡によって効力を生ずる贈与を「死因贈与」といいます。贈与を受ける人(受贈者)が対価にあたらない程度の義務を負担する死因贈与を「負担付死因贈与」といいます。

「負担付死因贈与」により、ご自身の死亡を条件に無償で物を与えるとともに相手方に一定の負担を課すことができます。負担の内容としては、「生存中は同居して扶養する」、「ローンの残金を毎月○円支払う」などが考えられます。

(2)負担付死因贈与の特徴

「負担付死因贈与」の成立には、贈与者と受贈者の合意が必要となります。

受贈者が財産を受け取ったのに負担を履行しない場合、贈与者は、相当な期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないとき、「負担付死因贈与」を解除できます。

負担の全部に類する程度の履行がされた場合、やむをえないと認められる特段の事情がない限り、贈与者は「負担付死因贈与」を撤回することはできません。撤回する場合でも、遺言による必要はありません(最判昭和57年4月30日民集36巻4号763頁参照)。

(3)負担付死因贈与と書面

「負担付死因贈与」は、書面がなくても成立します。しかし、契約の内容を書面にしておくと、後のトラブルを防止できます。また、不動産を贈与の対象とする場合、所有権を移転する登記の順位を保全しておく「仮登記」を申請する際には、契約内容を証明する書類が必要となります。こうしたことから、「負担付死因贈与」を確実に実行するためには、契約内容を書面にしておくべきといえます。

2 負担付遺贈

(1)負担付遺贈とは

遺言という一方的な意思表示によって財産を他人に無償で与えることを「遺贈」といいます。遺贈を受ける人(受遺者)が対価にあたらない程度の義務を負担する遺贈を「負担付遺贈」といいます。

「負担付遺贈」は、財産を与える人の死亡により効力を生ずる点や、相手方に負担を課す点で、「負担付死因贈与」と同様といえます。

(2)負担付遺贈の特徴

「負担付遺贈」は、民法という法律で定められた遺言の方式で行う必要があります。

受遺者は、遺言をした人(遺言者)が亡くなり、自己が遺贈を受けることを知ってから3か月以内であれば、「負担付遺贈」を放棄することができます。

受遺者が財産を受け取ったのに負担を履行しない場合、相続人は、相当な期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないとき、「負担付遺贈」に係る遺言の取消しを裁判所に請求することができます。

(3)負担付遺贈と相手方との合意

「負担付遺贈」は、遺言という一方的な意思表示によって行われますから、遺言者と受遺者との合意は必要ありません。しかし、受遺者は負担付遺贈の放棄ができますから、遺言者と受遺者は事前に話し合って合意をしておくべきといえます。

  方式 相手方から
の放棄
負担が
履行されない場合
負担が
履行された場合
負担付
死因贈与
合意必要
書面不要
できない 贈与者が、
催告をした上で、
解除できる
特段の事情がない限り
撤回できない
負担付
遺贈
合意不要
遺言必要
できる 相続人が、
催告をした上で、
取消しを裁判所へ請求
遺言により
自由に撤回できる

3 負担付死因贈与・負担付遺贈のご相談

相手方に負担を確実に実行してほしい場合は「負担付死因贈与」、後に撤回が必要となるかもしれない場合には「負担付遺贈」が優れているといえます。

「負担付死因贈与」・「負担付遺贈」のいずれも、財産を与える人が亡くなった後に確実に実行するため、弁護士など信頼できる人を「執行者」と指定しておく方がよいでしょう。

また、「負担付死因贈与」・「負担付遺贈」のいずれによっても、相続人に保障された相続財産の割合である「遺留分」を侵害することはできません。こうしたことについても、内容を決める際に考慮しておく必要があります。

当事務所は、みなさまのご希望に沿うよう、最適な方法をご提案し、実現して参りますので、お気軽にご相談ください。

※こちらもご覧ください(生前贈与・死因贈与・遺贈のページ)

 

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