こんにちは弁護士の奥田です。
今日は新しく改正された相続法、その中で『遺留分制度』について説明をします。
この新しい遺留分制度は、令和元年の7月1日から新しい制度に変わることになりますので、ご説明をします。
こういう事例です。お父さんがおられて、お子さんは二人だけど、お母さんは既に亡くなってるといったようなケースで想定します。
お父さんが亡くなったんだけれども、財産としては建物(評価額4000万円)・土地(同じく評価額4000万円)の財産がありました。
お父さんが亡くなった時に遺言があって、お父さんの遺言で「財産については全て長男に相続させる」とあった、というようなケースで考えます。
この場合、「財産は全部長男に相続させる」という遺言があったとしても、『遺留分』という制度がありますので、長女はその遺留分については確保できるということになります。
この場合の遺留分率というのは1/4ということになりますけれども、この遺留分率については変更はありません。
ただ何が変わったかというと、従来は、長女が長男に対して『遺留分減殺請求』(「減殺(げんさい)」とは減るに殺すという字を書く)ということをすれば、その効果として、今回この事例で言うと建物・土地それぞれについて長女は遺留分減殺請求の結果、1/4ずつの共有持分を持つ、ということになっていたわけですね。
そうすると1/4ずつ共有持分を持つということになると、長女の遺留分というのはそれで確保できるわけですが、ただ法律関係がめんどくさい。
つまり、建物の1/4・土地の1/4ということになって、個々の財産の1/4について共有関係が生じ、それをどう分けるかということで揉め事が起きやすかった、ということが一つあります。
それからもう一つは、例えば事業承継のようなケースで、ご長男がこの土地を使ってお父さんが営んでいたご商売をご長男が続けているといったような場合に、事業用の土地について、事業と全く関係ないご長女が共有持分を持つとこういうことになると、事業の円滑な遂行が妨げられる、といったような問題もありました。
そこで新しい制度では、長女は長男に対して遺留分減殺請求でなく、『遺留分侵害額請求』ということをして、その結果どうなるかと言うと、個々の遺産について共有持分を持つということではなくて、長女は長男に対して遺留分侵害額についての金銭債権を持つ、ということになるわけです。
この場合の事例で言うと、財産の評価額が全部で8000万円で遺留分率が1/4ですので、長女は長男に対して2000万円(8000万円の1/4)をお金で払ってくれ、と言う権利を持つことになります。
そうすることによって、長男としては商売で使う土地、事業で使う土地については全部自分のもの、あとは長女にお金を払えばそれで解決だと、こういうことになるわけです。
ご長女としてもシンプルにお金で払ってくれという風に言えればいいということが多いかなと思います。
ですので、今回の法改正によって、長女は長男にお金で請求できると、こういうことになります。
そうは言っても、急に2000万円払えと言われても遺産としてはこの土地と建物しかなくて、2000万円なんて急に用意できませんよ、といったようなケースもあるかと思います。
そういったような場合には、裁判所が期限を付与するということもできるようになりました。
2000万円払わなければいけないんだけれども、期限として少しその期限を猶予する、といったようなことが裁判所の決定で出来るようになりました。
このようにこの新しい制度では、遺留分については、『遺留分の侵害額請求』という形になって、金銭債権、お金で解決、というシンプルな制度に変更されましたのでご注意が必要かと思います。
この制度は今年、つまり令和元年7月1日から始まります。
7月1日以降に開始した相続、つまり7月1日以降にお父様が亡くなったような場合には、この新しい制度『遺留分侵害額請求』という新しい制度で解決するということになりますので、ご注意いただければと思います。
以上です。
最終更新日:2019年6月19日
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著者プロフィール
弁護士 奥田 貫介
おくだ総合法律事務所 所長
司法修習50期 福岡県弁護士会所属
福岡県立修猷館高校卒
京都大学法学部卒
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