相続放棄の手続き
生前に多額の借金をしていた父が亡くなり、父の遺産を相続することになったので、相続放棄をしようと思います。私1人で相続放棄の手続きができますか?
相続放棄の手続きは、相続人が単独で行うことができます。しかし、いったん相続放棄をすると、後から預貯金などプラスの財産が見つかっても相続することはできません。そして、相続放棄をした人の子や孫も、相続ができないことになります。こうしたことから、相続放棄の手続きは慎重に行う必要があります。安心して相続放棄の手続きができるよう、ぜひお気軽に弁護士にご相談ください。
相続放棄の手続き
亡くなった方(被相続人)の遺産は自動的に相続人に受け継がれます。しかし、遺産に多くの借金がある場合など、相続人となる人が遺産を相続したくない場合もあります。このような場合に、被相続人(亡くなった人)の権利・義務をまったく受け継がないようにすることを、相続放棄といいます。
(1)手続きは誰がする?
相続人が行います。
相続人が複数いる場合でも、他の相続人と一緒に手続きをする必要はありません。
相続人が未成年者である場合には、その法定代理人(親権者)が代理して手続きをします。
(2)どこで行えばいい?
被相続人(亡くなった方)の最後の住所地の家庭裁判所で行います。
家庭裁判所は全国にたくさんありますので、裁判所のウェブサイトなどで管轄を調べる必要があります。
相続放棄の手続きは、家庭裁判所に出向かなくても、郵送で行うことができます。
裁判所は、書類を受け取った後、相続放棄を認めるかどうかを判断するために、照会や呼出しをする場合があります。
(3)何が必要?
書類
・相続放棄の申述書
・被相続人(亡くなった方)の住民票除票又は戸籍附票
・申述人(相続放棄する方)の戸籍謄本
このほかにも書類が必要となる場合があります。
「相続放棄の申述書」は、裁判所のウェブサイトでも入手できます。
裁判所「相続の放棄の申述」(http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_13/)
費用
・収入印紙800円分(申述人1人につき)
・連絡用の郵便切手
(4)いつまでにすればよい?
相続の開始があったことを知った時から3か月以内(この期間を「熟慮期間」といいます。)に行わなければなりません。
「相続の開始があったことを知った時」とは、原則として、相続開始の原因となる事実(被相続人の死亡など)と自己が相続人となったことを知った時をいいますが、例外的に伸長できる場合があります。
(5)その他の注意点
相続人が次のような行為をした場合には、相続放棄ができなくなりますので、ご注意ください。
①相続財産の全部または一部を、処分した場合(ただし、例外があります)
②相続財産の全部または一部を、隠匿・消費した場合、相続財産の目録中に記載しなかった場合
相続放棄の手続きの進め方
相続放棄の可能性が少しでもある場合には、できるだけ早めに「相続放棄の申述書」を入手し、必要書類(戸籍謄本等)を確認する必要があります。実際に相続放棄するかどうかについては慎重な判断が必要ですので、必要書類を取り寄せながら考えていくことになります。
戸籍謄本等を取り寄せるには、遠隔地のため日数が多く必要になることがあります。
また、家庭裁判所に提出した書類に不備があれば、訂正などが必要になります。こうしたことから、3か月という熟慮期間は、あっという間に過ぎてしまいます。
相続放棄手続のご相談
いったん相続放棄をすると、たとえ熟慮期間(3か月)内であっても撤回をすることはできないので、後から預貯金などのプラス財産が見つかっても相続することはできません。相続放棄をした人の子や孫も、後で見つかった財産を相続できないことになります。こうしたことから、相続放棄を行うには、相続財産の慎重に判断する必要があります。安心して相続放棄の手続きができるよう、ぜひお気軽に弁護士にご相談ください。
弁護士の奥田竜子と申します。今回は相続放棄とその相続放棄ができる熟慮期間といいますが、その開始時点はどこかということをお話ししたいと思います。
相続放棄というのは法律的には、自己のために相続の開始があったことを知った日から3カ月以内、にしなければなりません。この3カ月という期間を熟慮期間。よく考える期間というふうに言っています。
ではあなたのお父さんが亡くなって半年後に、実はお父さんに多額の借金があることが判明したというような場合に、あなたは相続放棄をすることができずに、その借金を相続をしてあなたが返済していかなければならないのかという問題です。実はそうではありません。例えばあなたのお父さんと別居していて、財産の有無や内容について知らなかったとしても、しようがないというような事情がある場合には、借金の存在を知ったときから3カ月というように、3カ月という熟慮期間の始まりを後ろへずらすことが判例上許されています。
一般的には3カ月の熟慮期間の始期、いわゆる起算点といいますが、スタート時点はまずお父さんが亡くなった時点や、自分が相続人になったとき。まさにその瞬間というふうに捉えられがちなんですけれども、判例等によってそこの始期は若干緩和されているわけです。自分が相続人であることや相続財産の内容がある程度分からない場合に、相続放棄をすべきかどうか検討のしようもなく、当然判断できないと思います。熟慮のしようがないわけです。ですのである意味当然なんですけれども、この知識も知っておかれるとよいかなというふうに思います。
なお、どんな場合に相続放棄ができるのか。3カ月を超えている、1年を超えている、そういう場合に、当該事案で相続放棄ができるのかできないのかというのは、細かい事情をどう捉えていくのかということで、かなり変わってくると思います。ですのでご自身やご親族において勝手に判断をなさらずに、できれば必ず法律の専門家である弁護士に相談をされるとよいかなと思います。
お電話・メールでご予約、ご来所の上ご相談ください
メール・お電話でのご相談は受け付けておりません。必ずご予約ください
福岡市中央区大名2-4-19
福岡赤坂ビル601