相続放棄と遺品の処分
亡くなった夫が多額の借金をしていたので、相続放棄をしようと思います。夫は単身赴任をしていたので、借りていたアパートに残った夫の遺品を整理しなければなりません。私が夫の遺品を処分してもいいでしょうか?
相続人は、ご自身の財産に対するのと同程度の注意をもって相続財産の管理をしなければなりません。しかし相続放棄をする前に、相続人が相続財産を「処分」したときは、相続放棄ができなくなります。ここにいう「処分」には、売却したり壊したりするなどの行為が含まれます。
「処分」にあたるかどうかは、相続財産の性質や相続財産全体に対する割合などから判断されます。このことから、経済的価値のない物を捨てることはできますが、高価な物を売却すれば相続放棄ができなくなる可能性があります。
どのような行為が「処分」にあたるかは、個々の事案によって異なりますから、弁護士などの専門家による判断が必要となります。したがって、遺品はそのまま保管しておくなど、慎重に対応する方がよいでしょう。しかし、どうしても遺品の処分をしなければならない場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。
1 相続放棄をする前の財産管理
相続放棄をする前は、相続財産が誰に受け継がれるのかわからない不安定な状態にあります。このことから、相続人は、ご自身の財産に対するのと同程度の注意をもって相続財産の管理をしなければなりません。
相続財産の管理としては、修繕など相続財産の保全に必要な行為や、劣化が著しい物の売却など時間の経過により不利益となるものの処分が含まれます。
2 相続放棄が認められなくなる「処分」
相続放棄をする前に、相続人が相続財産を「処分」したときは、相続放棄ができなくなります。これは、相続財産を処分すれば相続する意思があるとみてよいことなどによるものです。
ここにいう「処分」には、相続財産を売却するなどの法律上の処分、壊すなどの事実上の処分が含まれます。
具体的にどのような行為が「処分」にあたるのかは、相続財産の性質や相続財産全体に対する割合などから判断されるので、個々の事案によって異なります。つまり、経済的価値のない物を捨てることはできますが、高価な物を売却すれば相続放棄ができなくなる可能性があるのです。
古い判例には、形身分けとして衣類を他人に贈与したことが「処分」にあたるとするものがあります(大判昭和3年7月3日新聞2881号6頁)。
しかし、不動産、商品、衣類等が相当多額にあった相続財産の内より、僅かに形見の趣旨で背広上下、冬オーバー、スプリングコートと位牌、時計、椅子等を妻が受領しても「処分」にあたらないとする裁判例もあります(山口地徳山支判昭和40年5月13日下民集16巻5号859頁)。
3 相続放棄前の遺品処分のご相談
どのような行為が相続放棄を認められなくなる「処分」にあたるかについては、個々の事案によって異なりますから、弁護士などの専門家による判断が必要となります。
また、相続放棄をした後であっても、債権者を害することを知りながら相続財産を消費した場合には相続をしなければならなくなる場合があります。
したがって、遺品はそのまま保管しておくなど、慎重に対応する方がよいでしょう。
しかし、経済的価値のある物かどうかよくわからない場合や、劣化の著しい物があるため遺品の処分をしなければならない場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。
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