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特別寄与料 相続人でない親族(お嫁さん等)の介護・貢献が、考慮されるようになりました

相続人でない親族(お嫁さん等)の介護・貢献が、考慮されるようになりました※申立て期間に注意※

1 はじめに

 この動画では、「特別寄与料」という制度について、解説したいと思います。

  ◆特別寄与料とは/制度創設の背景 →2.

  ◆特別寄与料の要件(4つ) →3.

  ◆特別寄与料の請求方法 →4.

  ◆特別寄与料の相場・決め方 →5.

2 特別寄与料とは/制度創設の背景

 特別寄与料とは、相続人には該当しない親族が、被相続人の財産を維持または増加させるために特別の貢献をした場合に、相続人に対して、貢献度に応じて請求できる金額のことをいいます。

 

 相続人には該当しない親族というのは、たとえばお姑さんが亡くなった場合のお嫁さん、伯父さんが亡くなった場合の甥御さんなどです。

 そういった方が、被相続人の生前に介護をしたり、家業を手伝ったりしていていることは少なくない一方、旧民法下では、遺産分割はあくまで相続人間の問題であり、相続人以外の親族の方の貢献を考慮することはできませんでした。

 

 

 このような問題を背景として、相続人以外の親族の方が被相続人のためにかけた労力に報いるべく、2019年7月1日、この特別寄与料という制度が新設されました。

 

3 特別寄与料の要件(4つ)

特別寄与料を請求するための要件は以下の4点です。

 

⑴ 被相続人の親族であること

⑵ 被相続人に対し、療養看護その他の労務の提供をしたこと

⑶ ⑵が無償のものであること

⑷ ⑵によって、被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をしたこと

 

以下、詳しくご説明します。

⑴ 被相続人の親族であること

親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族のことをいいます。

また、ここでいう親族には、もともと相続人である方や、相続放棄をした方、相続人の欠格事由に該当する方、そして廃除された方は含まれません。

 

また、現行法のもとでは、これらの親族関係は法律婚が前提とされているので、事実婚については親族関係が認められないことになります。

⑵ 被相続人に対し、療養看護その他の労務の提供をしたこと

文字通り、「労務の提供」が必要になりますので、財産給付は要件に該当しないということになります。財産給付というのは、たとえば被相続人に仕送りをしたり、被相続人の事業に出資をしたりするなど、直接お金等の財産を渡すことです。

⑶ ⑵が無償のものであること

労務提供について対価を受け取っている場合には、二重取りになってしまうため、特別寄与料を請求できません。

 

ただ、お小遣い程度でももらっていればダメかというとそうではなく、労務と金額とのバランスによっては、特別寄与料の請求が認められる場合もあります。

⑷ ⑵によって、被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をしたこと

特別寄与料は、被相続人の出費を抑えて財産を維持したり、家業を手伝って財産を増加させたりしたことに対して支払われることになります。

4 特別寄与料の請求方法

⑴ 誰に?

特別寄与料は、相続人に対して、法定相続分に応じて請求することになります。

 

たとえば、特別寄与料が100万円で、相続人が被相続人の妻(相続分1/2)と子2人(相続分1/4ずつ)であるケースでは、3人の相続人に対し請求することになり、請求額の内訳は妻50万円、子1人につき25万円となります。

⑵ どのような方法で?

現時点では、

 ① 直接請求する

 ② 調停を申し立てる「特別の寄与に関する処分調停」

の2パターンがあり得ます。

 

①は当事者間で協議し、解決・精算する方法です。

 

②は裁判所が司会者の役を引き受け、当事者双方から事情を聴いたり、必要に応じ資料提出を受けたりしながら事情を把握したうえで、解決案を提示したり、解決のために必要な助言をしたりして、合意を目指す協議を行うことになります。また、調停が不成立となった場合には、裁判官が結論を決める審判手続に進むことになります。

 

⑶ いつまでに?【重要】

 特別寄与料の請求は、

 ① 特別寄与者が「相続の開始があったこと」及び「相続人」を知った時から6か月を経  過したとき(消滅時効)

 または

 ② 相続開始の時から1年を経過したとき(除斥期間)

までしかできません。それ以降請求することができなくなります。

 

そのため、特別寄与料を請求できる方は、相続開始後、すぐに請求を検討し、必要資料を揃える等の準備をしなければなりません。

 

弁護士に相談にいらっしゃった段階で既に期間が過ぎてしまっていたり、残り1週間しかないというケースだと、対応が不可能または極めて困難なものになりますので、充分に気を付けられてください。

 

5 特別寄与料の相場・決め方

 特別寄与料の金額については、法律の定めがないため、基本的に当事者間で直接協議する場合には、金額ついても話し合いによって決めることになります。

 一方、調停・審判を行う家庭裁判所においては、「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。」との規定があります。

 そのため、当事者間で裁判外で協議を行う場合も、これらの考慮要素が参考になるのではないかと思います。

 

 具体的には、被相続人の看護・介護をした場合【療養看護型】と、被相続人の家業に従事した場合【家業従事型】との2類型に振り分けて、考えられています。

⑴ 療養看護型

基本的には、

 特別寄与料=①看護・介護日数×②介護報酬相当額×③裁量割合

という計算式で検討されることになります。

 

※①:入院・入所・介護サービス期間は除く。

 ②:介護保険制度が要介護度に応じて定めている介護報酬基準額を基準とします。凡そ5000円~8000円/日です。

 

 ③:親族にはもともと扶養義務があること、介護等の専門家ではないこと等から、①×②の費用を控えめに計算することとし、0.5~0.9を乗じることになります。通常は0.7が基準となることが多いです。

 

⑵ 家業従事型

基本的には、

 特別寄与料=①特別寄与者が通常得られたであろう給与額×②(1-生活費控除割合)×③寄与期間

 

という計算式で検討されることになります。

 

※①:賃金センサスを用いて算出することが多いです。

 

 ②:家業従事者の場合、労働への報酬が生活費等の形で家業収入の中から支出されている場合も多いため、二重計上とならないように、これを控除することになります。

 

6 おわりに

 以上、今回の動画では、

 

  ◆特別寄与料とは/制度創設の背景 →2.

  ◆特別寄与料の要件(4つ) →3.

  ◆特別寄与料の請求方法 →4.

  ◆特別寄与料の相場・決め方 →5.

についてご説明しました。

 今回特に重要となるのは、特別寄与料の請求ができるのは、被相続人が亡くなられた後半年、最大でも1年以内という点です。請求の準備のために時間がかかることもふまえると、できるだけ速やかに弁護士にご相談いただいた方が良いかと思います。

 本日の解説のうち、他の要件該当性の確認や、請求額の検討、必要資料の整理については、ある程度弁護士も対応できますので、まずはこの期間だけおさえていただければと思います。

 

 今回もご覧いただきありがとうございました。

執筆者紹介

弁護士 井上瑛子(いのうえ はなこ)

九州大学法学部卒

九州大学法科大学院修了

福岡県弁護士会所属

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