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中小企業の事業承継における遺言の重要性

こんにちは弁護士の奥田です。

今日は、中小企業の事業承継における遺言の重要性、株の相続の場面に関してお話をしたいと思います。

こういう事例です。

お父さんがおられて、お子さんが長男・二男・三男 3人います。

お父さんは会社をオーナー経営者として経営しておられて、ご長男が例えば専務という形で、お父さんの右腕として長年会社・お父さんをを支えています。

二男・三男はもう家業・会社とは全く関係なしに別のところで勤めておられる等、そういった事例です。

 

この時に会社の発行済株式が500株あって、例えばお父さんがそのうち300株お持ちで、将来の後継者候補のご長男が200株持ってるといったようなとき、お父さんが遺言なしに亡くなってしまいました、といったケースを考えた時にどうなるかというと、、、

 

遺言がなければ、これは法律上は「法定相続」ということになって、長男・二男・三男 3人が平等に相続する、平等に権利を取得する、ということになります。

 

そうすると、よく誤解されがちなのは、このお父さんの300株は、長男・二男・三男が1/3ずつ取る(権利を取得する)わけですから、長男は(300株のうちの1/3は100株ですから)100株取得します。それから二男も100株、三男も100株、ということで、

・長男は(もともと持っていた200株に相続した100株が加わって)300株

・二男は100株

・三男は100株

つまり、総数500株のうち、長男が300株持ってるわけですから、ご長男が過半数株主として、会社の経営を自由にできるという風に思われがちなんですけれども、これはそうはならないというのが法律の定めになっています。

 

どうなるかというと、法律上このお父さんの300株というのは、一つ一つの株が全部集まって300株というわけですから(今はもう株券はない会社が多いんですけれど…)、模式的に書くとこの一株ずつがずっと集まって全部で300株 ということなんですね。

 

その時にどうなるかというと、この一株ずつが3人で共有になる。法定相続によって一株ずつの権利が3人に1/3ずつ帰属するという話になるわけです。

 

そうするとこの一株ずつが1/3・1/3・1/3ということで、全部他のものもずっとこうなるわけですね。

そうした時に、株の大切な権利内容としては「議決権」というのがあるわけです。

 

議決権は、”一株一議決権”ですから、一株について一個の議決権がずっとあると言うことになります。ただ1/3ずつこの3人で一株を共有してるということになるわけで、3人が意見の相違がなければ、仲が良ければそれでいいわけですけれども、例えばここで長男派と二男・三男派で仲が悪かったりとか、あるいは意見の相違がある、争いになる、といったときにどういうことが起こるかというと、、、

 

二男・三男派、合わせると2/3ですね。そうすると一株ずつそういう状況になって、意見が合わない時には持分の過半数で決めるというのが法律になっていますから、そうするとどういうことになるかというと、この相続の対象になったお父さんの300株について、一株ずつそれぞれ二男派・三男派が2/3持っているわけですから、すべてのこの300株については二男派・三男派が自由に、その二男派・三男派の意見が反映されるということになって、その結果、300株については全部、二男・三男の方で自由に議決権行使ができると。

そうするとどうなるかというと、このお父さんがもともと持っていた300株は、二男・三男が結託する(協力する)と、議決権行使は二男・三男の自由に出来でしまう、ということになります。

そうすると300対200ということになって、株主総会では長男派が負けてしまう、と言うことになります。

 

そうすると、例えば長男を取締役から解任するとか、あるいは任期満了になった時に長男を取締役として再任しない。代わりに二男・三男が自分たちが取締役、あるいは社長だ、代表取締役だ、ということで、会社のことは二男・三男が自由にするぞ!という事態が生じてしまい、そうするともう長男に継がせるというような話が全部なくなってしまう、そして争いがとことんこじれる。

もうそれこそ会社として機能しなくなるような大変な事態にもなってしまうわけですね。

 

例えば長男はお父さんの後継者として銀行借入について保証してるといったような場合に、長男が取締役として再任されないとか、解任されるとかいうことになると、会社としてはもうやっていけないということになってしまうわけです。

 

ですのでこういったケースの時には、是非ともお父さんの方で生前に、「株については全部長男に相続させる」というような遺言をしておけばこのようなことは起こらない、ということになるわけです。

 

ですので、今日の話、「株」というのは単純に数の頭割りというか、300÷3ということで帰属するということではなくて、一株ずつが法定相続割合で共有になる。

その結果、このケースでいえば二男と三男、つまり過半数を取ったその相続人の方で、結論として相続財産である株については全株について過半数の二男と三男の方で自由に出来てしまう、と、こういったような事態が生じうる事になるわけです。

 

中小企業の事業承継・相続という場面では、是非ともこのお父さんとしては「遺言」をして、株については全部長男に相続させる、といったような手だてをしておけば、こういうことが生じないわけですので、そこは最低限そういう風にされることを強くお勧めしたいと思います。

今日の話は以上です。

 

最終更新日:2019年10月9日

 

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筆者プロフィール

弁護士 奥田 貫介 

おくだ総合法律事務所 所長 

司法修習50期 福岡県弁護士会所属 

福岡県立修猷館高校卒 

京都大学法学部卒 

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