遺留分の制度については、最近法改正があり、従来は、「遺留分減殺請求」をすると、個々の財産について遺留分権者の持分が生じる、ということだったのが、
改正法では、遺留分権者は金銭請求権を持つ、ということになりました。
これは、持分を生じるなどといったことにすると、権利関係が複雑になってよくない、金銭の請求権を持たせれば遺留分権者の保護として十分、という判断によるものです。
この点に関して、次のような問題があります。
Aが父親、BとCが子供。
Aが亡くなって、財産は現金6000万円と時価2000万円の不動産。
Aが生前「すべてBに相続させる」との遺言を残していたが、Cが遺留分侵害額の請求。
BとCで交渉の結果、Cが不動産(2000万円)を取得することになりました。
そこで、最終の合意書を作ろうということになるのですが、この場合、改正法に則って「遺留分侵害額請求」の弁済としてCに不動産をわたす内容にすると、本来、Cが持っているのは2000万円の金銭請求権ですので、Bが土地でわたすのは、BがCに2000万円で土地を売って、代金2000万円と遺留分侵害額請求権2000万円とを相殺するのと一緒だ、ということになります。
そして、2000万円で不動産を売った場合には、不動産の「譲渡所得税」がかかることになってしまいます。これは譲渡所得のおよそ2割位で、この譲渡所得とは、おおよそ、「売った金額から買った時の金額を引いた額」ということになるのですが、買った時の金額がわからなければ(相続では、先代が昔購入した価格が分からないというケースはよくあります)、売った金額の5%で計算する、ということになっています。
これが結構バカになりません。
そこで、このような場合に、BとCとで、「遺産分割」をした形であれば、この譲渡所得税というのはかかってこないということになります。
ですので、こういった場合には、弁護士のほか、税理士の先生にも関与していただいて、どのような合意方法がよいのか、税金面も含めてよく検討すべきといえるでしょう。
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筆者プロフィール
弁護士 奥田 貫介
おくだ総合法律事務所 所長
司法修習50期 福岡県弁護士会所属
福岡県立修猷館高校卒
京都大学法学部卒
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