Q.長年、妻と2人の子の4人で商店を経営してきました。事業を長男に譲りたいのですが、妻にも一定の割合の財産をのこしたいと考えています。どのような方法があるでしょうか。
A.法律的に結婚している相手を「配偶者」といいます。「配偶者」は、常に「相続人」になり、法律的には、1/2の割合で亡くなった方の財産を受け継ぐことになります。
本問の場合、「法定相続分」にしたがえば、「配偶者」より子の方が相続分が少なくなるので、事業用建物など大きな財産が相続財産の大半を占めるような場合などに、事業用財産をご長男に受け継がせ、また、配偶者にも一定の財産を残すためには、「遺言」によって誰に何を相続させるか、指定しておくとよいでしょう。
「遺言」は、法律に従った方式で行わなければ無効となり、亡くなる方の意思どおりにならないことになってしまいますので、ぜひ弁護士にご相談ください。
1 「配偶者」とは
「配偶者」とは、法律的に結婚している相手方のことをいいます。
日本では、婚姻届を提出しなければ、法律的に結婚したことにはなりません。例えば、長年同居して子もいる男女でも、婚姻届が提出されていなければ、お互いに法的な意味での「配偶者」ではないことになります。
2 「配偶者」の「相続分」
亡くなった方の財産が一定の範囲の人に引き継がれることを「相続」といい、「相続」を受けることのできる人を「相続人」といいます。「配偶者」は、法律上、常に「相続人」となります。
「相続」で受け継ぐことができる財産の割合を「相続分」といいます。法律で定められた「相続分」は「法定相続分」とよばれ、亡くなった方が「遺言」をしていない場合などに適用されます。
「法定相続分」に従えば、亡くなった方に「子」がいれば、「配偶者」が1/2、「子」が1/2となります。
つまり、夫が亡くなるとその配偶者である妻は1/2の割合の財産を受け継ぐことができるのです。
「法定相続分」は「配偶者」より子の人数が増えれば、子の方が少なくなるので、事業用建物など大きな財産を特定の子に受け継がせるには、「遺言」によって「相続分」を指定しておく必要がある場合もあります。
あわせて、配偶者の以降の生活も考慮して、一定の、あるいは特定の財産を残すことを指定しておくとよいでしょう。
3 「遺言」のご相談
「遺言」は、亡くなった方の意思を尊重する制度です。そのため、「相続分」や相続の方法を指定することができます。
しかし「遺言」は、法律に従った方式で行わなければ、無効となってしまいます。このため、ご自分の思う通りに相続により財産を分けるには、弁護士に相談し、法的に「遺言」内容や記載内容を確認してもらう方がよいでしょう。
「相続」や「遺言」については、ご自身のみならず、ご家族にも納得していただくことが無用の争いをさけるポイントとなりますので、是非、事前に弁護士にご相談ください。