Q.長年、妻と2人の子を合わせた4人で商店を経営してきました。そろそろ事業を長男に受け継がせたいのですが、相続の割合は法律で定められたとおりでなければならないのでしょうか?
A.「遺言」によって、相続時にご長男が事業を受け継ぐよう配慮することができます。
亡くなった方の財産が一定の範囲の人に引き継がれることを「相続」といいます。「相続」を受けることのできる人(相続人)が受け継ぐ「相続財産」の割合を「相続分」といいます。法律で定められた「相続分」が「法定相続分」です。
「法定相続分」は、亡くなった人が遺言をしていなかったり、「相続人」同士の話合いで「相続財産」の分け方が決まらなかったりする場合に、「相続財産」の分け方を決めるときに利用されます。配偶者と子がいる場合、法定相続分に従うと配偶者が1/2、残りの1/2を子で均等に分けることになります。
これに対し、うまく「遺言」を活用して、ご長男に事業を受け継がせることもができるようになります。
「遺言」をする場合にも、一定の割合で他の相続人にも「相続財産」を分け与えるなど様々な配慮をしておくと、「相続人」となる方同士で争いを防ぐことができます。「相続」については、ご家族に納得していただくことが争いを防ぐポイントになりますから、お気軽に弁護士にご相談ください。
1 「法定相続分」とは
亡くなった方の財産が一定の範囲の人に引き継がれることを「相続」といいます。「相続」を受けることのできる人を「相続人」といいます。
「相続人」の範囲は、法律で決まっており、原則として、「配偶者」は常に「相続人」となります。亡くなった方に「子」があれば「子」が、「子」がなければ親などの「直系尊属」が、「子」も「直系尊属」もなければ「兄弟姉妹」が相続人となります。
「相続」される財産は「相続財産」とよばれ、「相続人」が受け継ぐ「相続財産」の割合を「相続分」といいます。法律で定められた「相続分」が「法定相続分」です。
「法定相続分」を表にすると、次のようになります。
相続人の構成 | セル2 | ||||
配偶者 | 子 | 直系尊属 | 兄弟姉妹 | ||
第1順位 | 配偶者と子 | 1/2 | 1/2(合計) | ||
第2順位 | 配偶者と直系尊属 | 2/3 | 1/3(合計) | ||
第3順位 | 配偶者と兄弟姉妹 | 3/4 | 1/4(合計) |
2 法定相続分が適用される場合
亡くなる方(被相続人)は、誰がどの範囲の財産を相続できるかについて、「遺言」によって決めることができます。そして、亡くなった方の「遺言」によって「相続分」が定められなかった場合、「相続人」同士の話し合いで「相続分」を決めることができます。さらに、「相続人」同士の話し合いで「相続分」が決まらない場合には、「法定相続分」で決めることになります。
配偶者と子がいる場合、法定相続分に従えば、配偶者が1/2、残りの1/2を子で分けることになります。
したがって、妻1/2、長男1/4、二男1/4の割合で「相続財産」を分けることになります。
これに対し、「遺言」をしておけば、ご長男1人だけに事業を受け継がせることができるようになります。
3 「遺言」のご相談
「法定相続分」は、一般に公平と考えられる財産の分け方を法律で決めたものです。このため、裁判所が財産の分け方を決める基準となったりします。しかし、ご家族の事情によっては「法定相続分」に従うことが必ずしも公平とはいえない場合があります。
「遺言」は、亡くなった方の意思を尊重するものであり、「相続財産」の分け方を決めることができます。しかし、「遺言」をする場合にも、一定の割合で他の相続人にも「相続財産」を分け与えるなど様々な配慮をしておくと、「相続人」となる方同士で争いを防ぐことができます。
「相続」については、ご家族に納得していただくことが重要となりますから、お気軽に弁護士にご相談ください。