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再転相続と相続放棄

父が運転していた自動車で事故を起こし、同乗していた祖父が亡くなりました。そのすぐ後に、父も亡くなりました。祖父は離れて暮らしていたので借金があったかどうかわかりません。しかし、父には多額の借金があることがわかっています。父の相続を放棄しても大丈夫でしょうか?

祖父が亡くなると父が相続人となり、父が亡くなると子が相続人となります。このような場合に父が相続放棄をしていなければ、子は、祖父から父への相続(第1相続)と父から子への相続(第2相続)という2つの相続をすることになります。

先に父から子への相続を放棄すると、父が持っていた祖父の相続を放棄する権利も失うことになります。しかし、父の相続を放棄すれば、祖父の財産も受け継ぐことはありません。

これに対し、先に祖父の相続を放棄した後は、父の財産を放棄することができます。

こうした取扱いは、先に父が亡くなり続いて祖父がなくなった場合に子が父に代わって相続人となること(代襲相続)とは異なるものです。

このように、死亡の先後や相続放棄の先後によって相続放棄の取扱いが異なってきます。そのほか、相続放棄をする場合には、他の相続人への影響などについても法的な知識が必要となりますので、ぜひ弁護士にご相談ください。

1 再転相続とは

祖父が死亡して父が相続人となり、父が死亡して子が相続人となった場合、子は、祖父→父(第1相続)と父→子(第2相続)という2つの相続をすることになります。このように第1相続とともに第2相続をすることを「再転相続」といいます。

先に父が亡くなり、祖父の相続人になるはずだった父に代わって子が祖父を相続する場合は、「代襲相続」とよばれます。

再転相続と代襲相続とでは、相続人の範囲が変わってきますので、注意が必要です。

2 再転相続の放棄ができる期間

相続放棄は、「相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に行わなければならないのが原則です。この期間を「熟慮期間」といいます。

しかし、再転相続の場合は、再転相続をする人が第2相続の開始があったことを知った時から起算されます。

上の例では、子が父の死亡を知り、そのために自己が相続人となったことを知った時から3か月以内であれば、祖父の相続を放棄することができるのです。

これは、再転相続をする人が、第1相続と第2相続のそれぞれについて相続放棄をするかどうかをよく考えることができるようにするため、第1相続についての熟慮期間を第2相続の熟慮期間と同じ期間まで延長するものです。

3 第1相続の放棄と第2相続の放棄

再転相続をする人は、第1相続と第2相続のそれぞれについて、相続放棄するかどうかを決めることができます。しかし、どちらの相続を先に放棄するかによって、相続放棄が認められない場合があります。

ア 第2相続を先に放棄する場合

上の例でいえば、父の相続を先に放棄すると、父が持っていた祖父の相続を放棄する権利も失うことになりますから、祖父の相続を放棄することができなくなります。しかし、父の相続を放棄すれば、祖父の財産も受け継ぐことはありません。

イ 第1相続を先に放棄する場合

祖父の相続を放棄しても、父の相続には影響を与えません。このことから、祖父の相続を先に放棄すると、父の相続を放棄することができます。

祖父の相続を放棄した後に父の相続を放棄しても、祖父の相続を放棄したことに影響はなく、祖父の相続が無効となることもありません(最判昭和63年6月21日家月41巻91号101頁)。

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