特別縁故者と共有財産
私は、子のない伯母に引き取られて30年以上にわたり事実上の養子として苦楽をともにしてきました。先日その伯母が、遺言をせずに亡くなりました。私たちが住んできた家は、伯母と伯母の義弟(叔父)の共有名義になっています。私は、これまで住んできた家をもらえないのでしょうか?
届出をしていない事実上の養子は、相続人とはなりませんから、遺言で財産を贈与されなければ、相続財産を受け取ることはできません。
しかし、亡くなった人(被相続人)に相続人がいないとき、被相続人と特別の縁故があった者(特別縁故者)が相続財産を受け取ることができる制度として、「特別縁故者に対する相続財産分与」があります。
相続財産が共有となる理由としては、以前に被相続人のご家族が亡くなったときに相続人が複数いたことが考えられます。相続財産が他の人と共有になっている場合でも、「特別縁故者に対する相続財産分与」の対象となります。
「特別縁故者に対する相続財産分与」が認められても、相続財産は他の共有者との共有のままです。このことから、建物すべてを1人の所有とするには、他の共有者との協議が必要となります。
こうした問題を防ぐため、当事務所では、遺言をおすすめしています。仮にこうした問題が生じた場合でも、当事務所は、司法書士などの専門家とも協力しながら解決して参りますので、お気軽にご相談ください。
1 特別縁故者に対する相続財産分与
亡くなった人(被相続人)と生計を同じくしていた人や被相続人の療養看護に努めた人など、被相続人と特別の縁故があった者を「特別縁故者」といいます。
相続人がいない場合に、「特別縁故者」が家庭裁判所に請求することによって、相続財産のうち債務を支払うなどして残ったものの全部又は一部を受け取ることができる制度を「特別縁故者に対する相続財産分与」といいます。
2 相続財産の共有
相続人が数人あるときは、相続財産は、相続人の共有となります。例えば、夫が亡くなり、子や夫の父母がいなければ、夫の兄弟姉妹と共有となります。
上の例では、伯母の夫(伯父)が亡くなったときに、相続財産は、伯母と伯母の義弟(叔父)の共有となったと考えられます。
3 特別縁故者に対する相続財産分与と共有財産
「特別縁故者に対する相続財産分与」は、遺言がない場合に被相続人の意思を推測し、法律上、相続人とならない人にも相続財産を分けるものです。
相続財産が共有持分であっても、他の財産と区別して取り扱う合理的な理由はありませんから、「特別縁故者に対する相続財産分与」の対象となります(最判平成元年11月24日民集43巻10号1220頁)。
「特別縁故者に対する相続財産分与」が認められても、相続財産分与の対象となるのは共有持分ですから、受け取る財産は他の共有者との共有のままです。
この場合、共有状態を解消するには、他の共有者と協議する必要があります。建物などは現物を分割できませんから、1人の所有にして他の共有者に持分に相当する金銭を支払う方法などが考えられます。
4 特別縁故者に対する相続財産分与のご相談
相続財産に共有となっているものがある場合、生前に他の共有者との協議により所有権を確定しておく方がよいといえます。そして、遺言で誰に財産を与えるかを明確にしておくことをおすすめします。
「特別縁故者に対する相続財産分与」を求める場合、申立ては定められた期間内に行う必要があります。相続財産分与が認められた後、他の共有者との協議や所有権の移転登記には、専門知識が必要となります。
当事務所では、遺言から所有権の移転まで、司法書士などの専門家とも協力しながら解決して参りますので、お気軽にご相談ください。
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